クルアーンについて知る
「かれらはクルアーンをよく考えてみないのでしょうか。もしそれがアッラー以外のものから来たとすれば、かれらはその中にきっと多くの矛盾を見つけることでしょう」(クルアーン4章82節)
クルアーンは、人間によって創作されたものではありません。それは人間の言語を使った、創造主アッラーの言葉そのものです。
西暦610年、ムハンマドがマッカから3キロほど離れたヒラー山の洞窟にてお籠りをしていたとき、最初の啓示は始まりました。全章節の啓示は23年間に及ぶものでした。最後期の啓示は、西暦632年、別離の巡礼後にアラファの丘に集まる聴衆に向かい、ムハンマドが説法を行なっているときでした(クルアーン5章)。
今日でもクルアーンは全114章の啓典として生きています。これらの章は、その時々の状況や必要性に応じて、少しずつ天使ジブリールを通して啓示されました。そして、ムハンマドの最後期にマディーナにおいてまとめられたのです。
メインテーマ
クルアーンのメインテーマは、アッラーの創造計画と究極の顛末(復活、審判、楽園、地獄)について人びとに気づかせることです。このアッラーの計画によれば、人間は「永遠の存在」として造られました。アッラーは人間の人生を死前と死後の2期間に分けました。死前の期間において人間は、試練にあります。死後の期間において人間は、報奨を受けるか、懲罰を受けます。死前は一時的な期間ですが、死後は永遠に続くのです。
クルアーンは、あらゆる人びとに知的革命をもたらすことを主眼にしています。多くの節は私たちを取り囲む自然現象の背後にある存在(アッラー)を察知するよう、人間の知性に働きかける内容になっています。例えば、アッラーの印(自然現象や奇跡)について、タファックル(黙想・熟考)、タダッブル(考察)、タワッスム(察知)するよう、クルアーンは人類に呼びかけているのです。
熟考すべき書物
クルアーンは法律書ではなく、アッラーの印について熟考・考察・察知するための書物です。それは人間の精神的自立や人類の和の基本的な教えについて語っており、預言者ムハンマドの人生において具体的に体現されました。クルアーンの教えに基づく具体的な行動について知りたければ、預言者ムハンマドの人生(預言者伝)を学びますが、クルアーンの教えについて知りたければ、クルアーンを熟考するのです。
クルアーンの基本的な教えの1つに多宗教の共生があります。例えば「あなた方には、あなた方の宗教があり、わたしには、わたしの宗教があるのです」(109章6節)と記されています。自らの宗教を守り、他の宗教を尊重する教えです。これは多宗教の共生に欠かせない非暴力の原理です。
社会生活については、アッラーが全ての人間に「生まれながらにしての自由」を与えたという教えがあります。ただし、人間は自由であるからこそ、抑制ある生活を必要とします。なぜなら、各人が自分勝手に生きれば、利害の衝突は避けられず、社会生活は破壊されてしまうからです。クルアーンにはこう記されています。「魂とそれを形成した方(アッラー)にかけて、そしてそれ(魂)に背信と篤信を授けた方(アッラー)にかけて。それを清める者は確かに成功し、それを汚す者は滅びます」(91章7-10節)
クルアーンの中で114回も繰り返されている言葉に「慈悲あまねく、慈悲深いアッラーの御名において」があります。全ての行為には始めがあります。何かを始めるときにはアッラーの御名を唱えることがクルアーンのスタイルです。これによって人びとは、アッラーが慈悲に満ち溢れていることを思い出すのです。
精神的自立と人類の和
クルアーンの教えは大きく2つにまとめられます。(1)唯一神(アッラー)のみを信仰行為の対象とすること(2)神の下において全ての人間は平等で、対等の権利を有することです。つまり、唯一神とつながることによる個人の精神的自立と、正義の確立を目指す人類の和が基本教義なのです。
クルアーンいわく、アッラーは人類に数え切れないほどの恵みを与えました。だから人間は、アッラーからの恵みに対して感謝すべきなのです。人間は何よりもアッラーを敬愛して畏怖すべきであり、自らの言動に責任を負っているのです。クルアーンは自省と人格の成長を促します。他人の破滅につながる暴力を命じることは一切ないのです。
全人類への啓示
この現世は、人びとがアッラーの意志に従って生きていけるかの試練の場であり、あらゆる言動が正確に記録される場でもあります。クルアーンによれば、アッラーの御元に楽園はあり、アッラーへの信仰に誠実な人やアッラーのしもべたちに優しく愛を持って接する人だけが楽園を許されます。ある人が永遠の楽園の住人に値するかは、現世におけるその人の言動が決め手となるわけです。したがって、憎悪、殺害、暴力はアッラーの意志とは合わない類のものです。憎しみには愛を、暴力には平和を持って解決することがアッラーの意志なのです。